育成塾講師・脇坂真吏/自問から導く経営判断
2015.02.10
■「それは必要なことか?」…自問から導く経営判断
株式会社Agri Innovation Design/代表/脇坂真吏さん
今回のインタビューは…育成塾のフィールドワークの場『ヒルズ・マルシェ』を運営されている脇坂先生。冷静な分析で、塾生たちが持つ課題に鋭く切り込む姿は、まさに農業界のドクターK!(*記者が勝手に呼んでいます)。そんな脇坂先生に、この育成塾で伝えてきた「農業経営のプロに必要なこと」についてお聞きしました。
■全国の塾生たちを戸別訪問
農女新聞
育成塾が始まって約半年、脇坂先生から見た塾生達の第一印象はどうでした?
脇坂
そうですね~、服装や態度を見ると、すごくちゃんとしているとは思いました。ただ…東京までわざわざ長い時間を割いて来ている割には、いろいろ学ぶぞという熱意までは感じなかったです。なので、正直最初は、あまり会話もしてない状況だったのもありますが、コレどうなっていくんだろうという思いもありました。
農女新聞
なるほど。そんななか、講義の回数を重ねるにつれて、塾生達と話す機会も多くなっていったと思いますが、印象は変わりました?
脇坂
そうですね。それぞれが持ってる熱意は感じ取れました。特に僕は、全国にある個人個人の家を実際に周って見させてもらうこともしましたし。
農女新聞
実際に周ってみていかがでしたか?
脇坂
とにかく、それぞれの立場や抱えている状況は異なっていました。自分自身が社長という方もいれば、社長の奥さんという方もいる。また、何人も従業員を抱えている会社の方もいれば、個人経営の方もいる。そういった状態に応じて課題も違うので、コレに育成塾としてどうアプローチしていけばいいか大変だなと思いましたね。
■自分の立ち位置を分析できるようになって欲しい
農女新聞
確かに大変そうですね。そんななかでの講義…どんなこと意識しました?
脇坂
とりあえず個人個人の満足度を高めることを意識しました。そのために「この商品で勝負すると決めて、フーデックスに掛ける人」「地域の中に上手く溶け込みながら農業をしていきたい人」「まだどうしていいか悩んでいる人」…それぞれに合った方法を見つけようと、チームを分けて話し合うこともしましたね。
農女新聞
脇坂さんはどんなチームを担当されたのですか?
脇坂
僕は「チーム断捨離」という、フーデックスに出るかどうか、出るとしてもどの商品で勝負しようかなど、悩んでいた方達のグループです。
農女新聞
その中ではどんなアドバイスを?
脇坂
僕はけっこう厳しく言うタイプの人間なので、何のために出るのかということが明確でない限りは出ても意味がないということは言いました。ただ大きい商談会だからとか、無料で出られるからとかじゃダメなんです。それじゃリーダーとして、経営者として、従業員への説明になりませんから。
農女新聞
それを受けて、「チーム断捨離」の塾生達の反応は?
脇坂
よく話し合って考えた結果、出ませんと宣言した人も何人かいます。でも、それも経営者としての1つの判断なので、マイナスなことではないと思います。むしろそうやって僕の問いに対してしっかりと考えてくれた、答えを出してくれたのは良かったです。
農女新聞
なるほど。そんな経営者としての成長を感じさせてくれた彼女達ですが、今後も、ココは意識していって欲しいというところは?
脇坂
講義でも一貫してやってきた内容ですが、農業の経営者として、自分の立ち位置をまず分析できるようになって欲しいですね。例えば、よくある一般的なトマト農家だったとしても、自分が現在どのくらいの規模で経営しているか、どういう品種を栽培しているか、どういう地域で経営しているかなど、それによって次に考えるべきことは変わってきますから。ただ「○○県のトマト農家」というようなざっくりとした認識では、次の経営判断ができないんです。
■FOODEX…そして卒業に向けて…
農女新聞
なるほど。そこはぜひ卒業後も意識していって欲しいですね。とココで、そんな卒業を前に3月にはいよいよフーデックスがありますが、ココでのみどころは?
脇坂
今回フーデックスに出るのは、僕達講師陣との話し合いを経て、経営者としてどういう勝負をしたいか明確にビジョンを持った方々…のはずです。なので、それが見た人にちゃんと伝わる形になっているかどうかに注目して欲しいです。もし伝わってなかったら僕らにも責任があるかもしれないですね(笑)。
農女新聞
そこはぜひ期待したいですね!ちなみに、フーデックスに出展しない塾生達は、フーデックスの間は何をするんですか?
脇坂
彼女達には、フーデックスに来ている業者さんをよく観察してもらいたいと思っています。業者の方々がどんなところを見ていて、どんなことを求めているかを知れば、自分の将来の顧客のニーズが見えてくると思いますよ。意外とコッチの方が勉強になるかもしれません(笑)。
農女新聞
最後にあらためて塾生達へのメッセージをお願いします!
脇坂
僕はけっこう全国各地を仕事で飛び回ってるんですけど、その中で話す事例として紹介したくなるような経営者になって欲しいです。それは3年後でも10年後でも構いません。期待しています。
農女新聞
ありがとうございました!
経営者に必要なことというと…「いろいろなノウハウを身に着け、常に新しいことに挑戦すべき」というイメージを抱きがちですが、脇坂先生のお話を聞くと…むしろ「自分にとって意味のないことはしてもしょうがない。無駄なところはそぎ落とす」という、まさに断捨離の判断ができることにあると感じました。塾生の方々には、ぜひ、自分のことを冷静に見つめ、それぞれにしか出せない成功事例を作っていって欲しいですね!