大吉枝美/高級外車ハマーとの出会いが転機
2015.01.16
■気がつけば…東京ドーム5個分の農場主
大吉枝美 (鹿児島県指宿市 大吉園芸)
大吉さんの実家は農家だったため小さい頃から農業の苦労を理解して育ちました。
そんなこともあり…『農家の嫁さんには、絶対にならない!』と看護師の資格を取得!
病院でお仕事をされていました。
ところが…現在の大吉さんは東京ドーム5個分の広さのキャベツ畑を持つ農業者!
一体何があったのでしょうか?
大吉さん就農のキッカケを辿るには今から7年前…大吉さん32歳の時にさかのぼります。
子どもの頃の決意通り…農業をやっていない居酒屋経営者の旦那さんと結婚した大吉さん。
ところが!
人生思うようにはいかないもので…旦那さんが突然、農業をすると言い出したそうなんです。
その理由は、マイホームを建てて、そのローンを払っていかないといけなかったこと。
じつは、旦那さんの祖父母は農家をされていて、
昔、天皇陛下が指宿にいらした時に、ホテルの料理長が指名するくらい
地元では有名なスイカを作られていた方でした。
そこで、旦那さんは1000万くらい稼げる農家になってやろうと決意。
祖父母のスイカ畑を手伝うようになったんだそうです。
ところが!
それから1年間。旦那さんは現実を知ることに…。
祖父母の農業は、旦那さんの思い描いていたやり方ではなかったのです。
手間暇かけて少量のスイカをつくる。だからこそ高い値段がつくというやり方。
これではイメージしているような稼ぎにならないと…
スイカ以外の栽培も試してはみるものの、どれも上手く行きませんでした。
「1人では難しい。誰かを雇おう!パートナーを探そうかな…」
そんな悩みを抱える夫の姿に大吉さん、思わず…
「パートナーを探すんだったら、ここに居るでしょ!!」
はい。これが、大吉さんが就農されるまでの経緯です。
(前置きが長くなりましたが…実は大吉さんのお話、ここからが面白いんです)
それでは・・・
大吉
パートナーを探すんだったら、ここに居るでしょと思って…。
絶対農家の嫁にはならないと思って…
せっかく居酒屋店主の亭主を見つけて結婚したのにとは思いましたが…。
農女新聞
大吉さんが手伝われるようになった頃は、もうスイカは作られていなかったんですか?
大吉
はい、スイカは難しいとわかっていたので・・・
オクラやカボチャも試してみたんですが、結局うまくいかず、
最後に行き着いたのがキャベツだったんです。
ちなみに、こちらが大吉さんのところのキャベツです。
農女新聞
キャベツは上手くいったんですか?
大吉
そうですね。今では畑も120カ所ぐらいありますから。
農女新聞
ひゃ、ひゃくにじゅう???
大吉
キャベツは畑を休ませないといけないので、上手にタイミングを
ずらしながらたくさんの畑でコンスタントに作るものなんです。
農女新聞
それにしても120カ所って…広さにするとどのくらいですか?
大吉
全部で20ヘクタールです。
農女新聞
ごめんなさい…全然想像つかないです。
大吉
東京ドームだと5個分くらい。
ちっちゃな畑は10アールで3000坪ぐらい、
だから・・・・あれやこれやあれやこれやあって・・・坪でいうとそれくらいです
農女新聞
ハハ、ハハハ、・・・とにかく広いことだけは、よくわかりました
あらためて…120カ所あるうちのひとつがこちら…
農女新聞
120カ所もあると管理するのは大変じゃないですか?
大吉
なので、今は10名のパートさんに手伝ってもらっています。
ちなみにこれ、去年の忘年会の写真です。
農女新聞
へぇ~すごい。大成功じゃないですか!
ご主人もパートナーに大吉さんを選んで大正解でしたね・・・。
ところで、そもそもキャベツにした理由は何だったんですか?
大吉
実は、高級外車のハマーに乗った農家さんを見つけたのがきっかけなんです。
農女新聞
ハ、ハマー。有名芸能人やプロ野球選手などが乗っているという、あのハマーがキッカケ…。
もう少し、そのあたり詳しく教えていただけますか?
大吉
最初から話すと少し長くなりますが・・・
農女新聞
ご遠慮なく・・・。
大吉
まずは、まだ就農して間もない頃、よちよち歩き状態の頃、
農業を引退する老夫婦に出会い、農機具を安く売ってもらったんですが…
それだけでなく、農作業の効率を上げるノウハウまで教えてもらったんです。
老夫婦の畑は、主人の祖父母の畑より規模も大きく、それまでとは一歩進んだ農家さんの指導を受けることができました。
そのおかげで、自分達の畑がちょうど4町(1町=約10000㎡)ぐらいまでになりました。
ちょうどその頃、主人が「もうこれ以上増やすのはやめよう。2人だけではこれ以上は無理だ」と言い出したんです。
私も、頑張ればいけるかなぁという思いもありながら、主人も限界まで働いていたのでしょうがないかなぁと思っていました。
そんな話を車中でしながら、農機具の展示会場に向かっていた時のことです。
展示会場の駐車場に、そのハマーが入って来たんです。
そして、そのハマーからは日傘をさしたご婦人が・・・この人が農家をやっているの?と思うような女性が歩いて展示会に入って行ったんです。
私は、「すご~い」と思って遠巻きに見ていたんですね…
農女新聞
ふむふむ…それからそれから!?
大吉
そうしたら、たまたま近くにいた農機具屋さんに「この人達は成功している人達だから」と、ハマーの農家の方を紹介してもらったんです。
話を聞くと、15町をフルに稼働させて、1日に1000ケースほど出荷しているとおっしゃって…
当時、自分たちは、100~200ケースが精一杯でしたからスゴイなって…。
そこで、老夫婦の時のように農作業の話をいろいろ伺い、今度は、
さらに一歩進んだ(スケールの大きな)ノウハウを学ぶことができたんです。
農女新聞
ちなみに、そのノウハウとは具体的には?
大吉
とにかく量を持ってないとダメだということ。
出荷量が少ないと市場に相手にしてもらえない。
市場に一目置かれるには、ガッツリ量を出すこと。
これを教わりました。
農女新聞
なるほど、それで今のような大躍進を遂げることが・・・
大吉
いえいえ、さらにもう一つ、大きな出会いがあるんです。
その人物は、ハマーの農家さんに紹介された市場の荷受人さん。キャベツの担当者の方なんですが・・・
その方と知り合いになって以降、私たちの商品がダメだしされ始めるんです。
「ナメクジ入っていたよ」とか「葉のフチが枯れてるよ」とか「軽かったね」とか。
私はダメだしされるのが悔しいので、もう一回同じコトを言わせない!と思って、すごい改善を始めるわけですね。
そうすると、商品をどんなにしたら綺麗にできるか・・・どんなにしたら病気を出さないでいられるか・・・
そうなると、農薬の勉強をしなければいけない。肥料の勉強をしなければいけない。品種の勉強もしなければいけない。
向こうのオファーに答えるために、どんどんキャベツにハマっていったんですね。
で、誰が箱を開けても綺麗だねと言われる商品に、ここ数年でたどり着いたわけですよ。
そうしたら、そこから後は、「箱指定」で注文がくるようになったんです。
農女新聞
なるほど…
大吉
となると、生産量が足りない、ということになって
また増やせ、また増やせ、という風になって、今にいたるんですよね。
農女新聞
ほんと、画に描いたようなサクセスストーリーですね。
農機具を売ってくれた老夫婦、ハマー農家さん、荷受人さん、
それぞれの段階で、いい出会いがあったんですね。
ちなみに、そんな大吉さんが幸せを感じる時ってどんな時ですか?
大吉
綺麗な畑を眺めている時ですかね。
農女新聞
綺麗な畑?
大吉
育っている途中、病気に罹っていなくて、草が生えていなくて
順調に育っているのを見て、「順調に育っているね、いいね君たち」と思っている時。
収穫間際の畑を眺めにいくより、生育途中の綺麗に揃っているのを見に行くのが
好きで、夕方みんなが帰ってから、あちこちの畑を「いいね、いいね」と
つぶやきながら、ぐるぐるまわるのが幸せな瞬間ですね。
話を聞かれていて、この人、キャベツにハマっていると思ったでしょ?
ハマってますよ!
農女新聞
(笑)十分、伝わっていますとも…
最後に、後進のみなさんに、アドバイスかメッセージ頂けますか?
大吉
農業はとても大変ですが、作物は子供と同じ、愛情いっぱいで育てるとその分応えてくれます。
頑張ったら、頑張っただけ帰ってきます。諦めたら諦めただけ・・・
私も諦めなくて良かったと思っています。
農女新聞
ありがとうございました。
これから農女を志す方、農女として頑張っている女性には、
とてもモチベーションが上がるお話だったのではないでしょうか・・・。
3つの出会い…、
ただ、その裏には、応援してあげたいと思わせる大吉さん夫婦の
一生懸命な姿があったんでしょうね・・・。
めざせ!東京ドーム100個分!!