【戸別訪問レポ】若い人たちに農業を見直して欲しい!
2015.03.02
育成塾の講師を勤める脇坂真吏さんが塾生のみなさんの農園を訪ね歩き、現場視察の上、課題解決の道を探る「戸別訪問」。今回の舞台は…鹿児島県・屋久島です!
羽田空港から鹿児島経由。飛行機で2時間半かけて、やってきました屋久島!
今回は、屋久島でタンカンを作られている市橋農園の市橋ちよみさんを訪ねます。
市橋さんは、「6次産業化」なんて言葉が生まれる前から、農園独自で販路を開拓された女性農業者の生けるレジェンド!
育成塾では、塾生のおかあさん的存在でありながらも、天真爛漫で少女のような可憐さも持ち合わせていらっしゃいます。現場を拝見するのが、大変楽しみです。
■市橋家で「6次産業化相談会」がスタート!
市橋さんのご主人と息子さんも同席され、和やかな雰囲気で相談スタート・・・と思いきや、市橋さんも脇坂さんものっけから真剣モード。それもそのはず、3月のFOODEX出店準備で、市橋さんにはやることが盛りだくさんなのです。
市橋
試飲はどうしようかと思ってるのよ
脇坂
何をどういう風に出そうと思ってるの?
市橋
タンカンの生絞りの急速冷凍果汁を出そうと思ってるのよね。
脇坂
今回のFOODEX出店の目的は何なの。
市橋
商品に興味を持ってくれる人がいるのかを知りたいのと、そういった人と出会いたいのよ。
同席されているご主人と息子さんから、時折り助け舟も出されながら、ご家族皆さんでウンウン考えて答えを一つずつ出していっています。こういうところからも、仲の良さ、家族チーム力の強さが伺えますね。
と、突然、思い出したように、農女新聞がメモを取るテーブルの上に市橋農園のタンカンが置かれました。
市橋
あなたタンカンって初めて食べる? 初めて食べた人に、感想を聞きたいのよ。
一同の視線が農女新聞に集まり、非常に緊張しながらの初タンカン・・・。
・・・ん!?なんだろう、この柑橘は!? 誇張ではなく、これまでの柑橘の概念が覆る! この濃い味、ジューシーさ、独特の香り、確かにクセになります!
市橋
そうでしょうそうでしょう。(ご家族一同うなずき)やっぱりそうなのよね、食べてもらうのが一番美味しさが伝わるのよね。
脇坂
とはいっても、どこででも試食できるものじゃないから。だから代替としての伝わるツールが必要なんだし、それを学ぶ機会でしょう。
市橋
そうよねー。あら、このシートは何かしら?
脇坂
これは商談シートだよ。じゃあ、これもひとつずつ詰めていこうか。日が暮れちゃうな・・・
といった掛け合い漫才のような一コマもありつつ…日が暮れるまでには無事、書類作成も終了しました。
相談が長引き、すっかりお夕飯の時間に。この日は市橋さんのお宅でそのまま夕食をいただくこととなりました。市橋さんお手製の温かい献立がテーブルに並び、にぎやかな家族団らんの夕食に。そこで、脇坂さんと市橋さんの、のっぴきならない関係が明らかに!?
■若い人たちに農業を見直してもらいたい!
市橋
いやー、ほんとに真吏(注:脇坂さんのお名前です)が『どうしても行かせてください!』といわなければ、真吏と屋久島が繋がることはなかったんだよねー。
脇坂
ほんとだよね。東京農大生の俺が研修の受け入れのお願いで電話した時には、収穫が終わっているから今年はもう学生の受け入れはしない、て言われたんだよね。そこをどうしても行かせてほしい、って頼み込んで受け入れてもらったんだよね。
市橋
やっぱりあんたとは縁があったんだよねー。あの頃からね、あんたは仕事も早かったしね、なんか違うところがあったよ。でも、その後は全然連絡くれなかったよねー。それで、全然違うルートから今回この育成塾に申し込むことになってさ、何の気なしに講師の先生を見たら、なんと真吏がいるじゃないのー! もうビックリしちゃってさー!
脇坂
ビックリしすぎて、俺に電話してきちゃったんだよね(一同爆笑)
農女新聞
それから毎年、学生さんの視察・研修を受け入れていますよね? どういう想いで受け入れているんですか?
市橋
農業は昔から「3K」って言われてね、若い人たちから敬遠されてきたでしょう。だからね、うちみたいな頑張っている農家を見てもらって、一緒に作業して、農業を見直してもらいたいのよ。2週間、一つ屋根の下で家族みたいに暮らしてるでしょう。だから関係が長く続くのよね。受け入れた学生が結婚したりとか、人生の節目で連絡くれてね、本当に親のような気持ちで見守らせてもらってるのよ。
ご主人や息子さんも口を揃えておっしゃるように、市橋さんはずーっと変わらない姿勢を貫いていらっしゃるのだそうです。息子さんにまで「すごいよね」と一目置かれるほどのバイタリティと、一貫して変わらない農業とタンカンへの想い。また今年も間もなく、農大生がやってきます。きっと、市橋さんの笑顔と力強さに支えられながら、楽しくも苦しい時間を過ごし、少しずつ何かを収穫していくのでしょう。
ちなみにこちらは、市橋家が受け入れてきた学生さんたちの日誌。
こちらの落書き・・・失礼。イラストは、市橋家に研修に来ていた際、脇坂さんが腕を振るったメニューを描いたイラスト。
市橋家に研修にきた農大生が作成したイラストを元に作られたシール。市橋農園の加工品にはこのシールを貼って販売しているそうです。
農女新聞
脇坂さんは学生時代から全国の農家さんの現場を周っていたそうですが、今の仕事にやはり直結することは多いのでしょうか?
脇坂
やはり、学生時代、全国の農家さんの現場を見ることで農家さんはカッコイイということを認識できました。現場は、全てが自分裁量。自分が動かなければ何も始まらない。ある意味極限の状況下で毎日、毎月、毎年を生き抜いていく。ただ、そういう姿が世間に伝わっていなくて一般の人たちの認識とのズレがあるので、そこを埋めるためにできること、それから、もっと農業を強くするためにも僕なりにできることがあるんじゃないかと、学生時代に会社を立ち上げるところから始まり、今もその考えは変わっていないですね。おそらく、仕事に取り組む姿勢も市橋さんをはじめ、農家さんの現場を学生時代に周ったことは大きく影響していますね。
■12年前と変わらない島のお土産レベルを変えたい!
さあ、これで今夜は就寝・・・と思いきや!屋久島の農業者さんらが集う交流会に参加することに。
屋久島の若者が集まって、これからの屋久島活性化のために何ができるか、自由に意見交換しながら交流会の場にも参加させていただきました。
屋久島の美味しいものとお酒を囲みながら、農家さんをはじめ、酒蔵にお勤めの方、観光ガイドの方、行政の方と屋久島に暮し、生活をしている多種多様な方々が集まり、垣根を越えたざっくばらんな交流会が行われました。
ほろ酔い加減の脇坂さんに、農女新聞は訪ねました。
農女新聞
この交流会も脇坂さんが呼びかけたそうですね? 屋久島に思い入れがあるようにお見受けしましたが…その理由は?
脇坂
屋久島に12年前に初めて来たときから、昨年久しぶりに来たとき、お土産のレベルが変わっていなかったんです。それにショックを受けて、もっと屋久島全体で何かしていったほうがいいのでは?と考えたら、地元の方々も同じようなことを考えている若い世代の方々がいたんです。
屋久島のことを第一に考えてタンカンを育ててこられた市橋さんの姿が、屋久島のこれからを考える島民の皆さんの想いを代弁しているのではないかと感じました。屋久島のほぼ全域が自然に覆われているといっても過言ではなく、まさに緑の島。のびのびとした空気そのままに、ノビシロものびのびと広がっていきそうな大いなる可能性を秘めていました。
最後に・・・タンカン農園を背景に、市橋一家と脇坂さんと記念撮影して戸別訪問は終了。脇坂さんのアドバイスを受けて…どんな出展になるのか? 3/3(火)からのFOODEX JAPAN(@幕張メッセ)をおたのしみに!