今年の計画が先か? 3年後の計画が先か?
2018.02.23
2月5日、6日に行われた第8回講義では「事業モデルの見直しと計画づくり」と「改善」をテーマに、さらに深く学ぶことに。本レポートでは、1日目の「事業モデルの見直しと計画づくり」に関するグループワークをメインにお伝えします。
■計画はどちらかを先にするのではなく…
前回の講義では、中期と単年度を分けて考え、位置づけの違うシートを作成しました。今回はさらに具体的に煮詰める作業。ところで、3年単位で作るのが中期計画ですが、3年先をイメージしてから単年に落とし込んでいくのか? それとも、今年の分を考えてから、2年、3年と伸ばしていくのか? 考える順番はどちらでしょう? 高橋澄子先生はこう説きます。
「みなさんは今、『1年目の年度末にはここまで行っていたい→3年後にはこういう状態にしたい』という思いで、1年目の事業モデルシートを書いています。書いていくと分かると思いますが、今年の期末と3年後があまりにかけ離れていると、間が埋まりません(笑)。だから、単年と3年のその両方を、行ったり来たりで考えていくことになると思います」
つまり、どちらかを先にすべし!という理想的な順番があるのではなく、行ったり来たりを繰り返して煮詰めていくのが極意。3年後の理想に辿りつくために、1年目はどうするのか? 1年目に達成するであろう現実を踏まえて3年後の理想に修正を加え…逆もまたしかり。それが中期計画の考え方。「事業モデルシートは、いつでも書き換えてほしいんです」と高橋先生の言うとおり、年の途中で取引先や状況が変われば、計画も変更もしていきましょう!
■ビジョンはあっても実行計画が無い会社は意外と多い
事業モデルシートの中央の欄には、「こういう事業環境だからこうする」「こんな競合が来るからこうする」なども書き込みます。事業別、部門別に、「生産は?」「販売は?」「業務システムは?」と、ひとつひとつ精査し、クリアしなければいけない課題は具体的に書き込みます。
その計画を具体的な行動にするのが、「年度実行計画」です。
「『こうありたい』というビジョンはあっても実行計画を持っていない会社は、実は多いんです。期限や担当を決めないと、計画は進みません」(高橋先生)
たとえば土地を増やしていきたいなら、挨拶回りを始めるなど、目標に対して具体的にアクションを起こさないと進まないもの。計画をやりきるためのアクションを「実行計画」として具体的に作ることが、大切とのこと。そのために、講義で配られたシートは役に立ちそうです。実際、使いやすく自分用に改造している塾生も!
「販売や生産の効率を確認するのは難しいもの。でもこのシートを書けば、人や物が無駄になっていたら分かります。だからこそ、みなさんには習慣づけてもらいたいんです。これをできるのが経営者だし、経営者の“攻め方”です」(高橋先生)
■お互いに「中期計画」をチェック!
講義で考え方の基礎を頭に入れたあとは、地域ブロックで分かれ、各々が作成した事業モデルシートにもとづき、中期3カ年の計画を1人ずつ発表しました。約2時間半に渡って行われたグループワークは、かなり白熱したモノとなりました。
まず、それぞれの課題について下記のように意見が発表されました。
「○年に災害で畑が流れているので、○○でカバーしていきたい」
「○○は現状維持。○○は3年後には海外からの輸入が増えるので、そこに対抗できる力をつけなくちゃいけない」
「私達の地域には新規参入の人がどんどん入ってきているので、今後そんな人たちと競合になっていきそう」
みなさん自分たちの置かれた環境を把握し、冷静に分析しているようです。その上で、それぞれの計画も、具体的!
「今は○○の生産で○万円あるので、ここに○○の資金を乗せて、法人化を目指している」
「○○については、加工業者を探して委託したい」
「○○は外食業者と組んで売上を伸ばしたい」
高橋先生は各テーブルを回り、「ここはビジネスの環境が変わることはありえるから、”保険をかける”のはアリだよね」「○○のためには■■しなきゃいけないよね? そこはどういう計画になっているの?」など、声をかけます。考え方に悩んでいる塾生には「これは全体の割合で見ればいいんじゃない?」「ここは利益率○○%と算出しておいた方が、目指す気持ちが生まれやすいよ!」など、アドバイスも行います。
発表を聞いたら、メンバー同士で意見交換! アドバイスもたくさん飛び出しました。
「○○だと収穫時期が長いからカバーできるかも」
「○○はネズミ対策も必要だよ」
さすが同じ農業に従事するみなさん、日常で生かせる生産面のアドバイスで助け合えるなんて、仲間っていいですね…!
加えてそのアドバイスも、農作業に関してだけではありません。
「この数字は売上目標からの逆算でもいいよね」
「この○○を販売に乗せれば、こっちランニングコストをカバーできるんじゃない?」
こんな経営者目線のアドバイスも、自然と飛び出します。塾生のみなさんは”将来ありたい姿”に近づくため、これまでの講義内容を”自分ごと”にして蓄積している模様です!
みなさんの生産物は、葉物野菜もあればトマトやキュウリなどもあり、米や小麦、花苗、果物と滝にわたり、有機栽培、酪農など、携わり方はみんな違います。そして販売ルートも違い、BtoBの人もBtoCの人もいます。
でも「儲ける仕組み」の考え方は、作っている生産物にかかわらず応用できる! それを実践しているような意見交換になりました。高橋先生も「みんな、カネでものを見てるね(笑)」と冗談めかしながら、経営者としての視点を身に付けた塾生のみなさんの成長に、笑顔がこぼれます。
残すところあと2回となった育成塾。卒塾に向け、さらに熱が入ります!