女性農業コミュニティーリーダー塾 実践編
大阪会場 第1回講義レポート
コミュニティづくりに大切な「3つの視点」とは?
2018.07
「女性農業コミュニティリーダー塾」大阪会場では、いよいよ講義がスタートしました。
まだ一枚も資料の入っていないバインダーが、初々しい! 今日からたくさんの学びがつめこまれて、夢もバインダーと共にふくらんでいくのでしょうね。
■まずは自分の価値観を知りましょう!
リーダー塾は、講義を聞いているだけではありません。早速、岡先生から「自分の歴史」を振り返り、それをグループ内で共有するというワークが出されました。相手の反応などを見ながら、「自分の価値観」や「価値観の多様性」を再確認できるワークです。
最初はとまどっていたように見えたみなさんですが、さすがは波乱万丈な女の人生。結婚、移住、出産、介護など、ドラマティックな体験談に、わいわいキャーキャー大盛り上がり!
おもしろーい、を連発していたグループに聞いてみると……
「女性にはやっぱり『柔軟性』や『忍耐力』、『どんなときも笑えるチカラ』が備わっているんだと実感しました。これって、自然を相手にする農業にもとても必要な要素ですよね」という答えが。
「女子力」を農業やコミュニティに活かしたいという気持ちが、さらに燃え上がった様子です!
■自己紹介から分析する「コミュニティの課題」
ここからは、金子先生と林先生にバトンタッチ。金子先生から、激励の言葉と共に、「コミュニティづくりの目的」について大事なおさらいがありました。
「みなさんが抱える課題――地域の活性化や女性の社会進出の促進などは、なかなか自分一人のチカラでは解決できません。なので、そのために仲間を作って動こうというのが、コミュニティづくりの狙いです。そして、コミュニティづくりは楽しくないと絶対続きません! 義務のような会は、途中でつぶれます。楽しい場をつくることを意識して、活動の場を広げてみてください」
気持ちを新たにしたところで、林先生がみなさんの自己紹介(前編・後編)から、気になったキーワードを拾い出して、金子先生がズバッと解説していきます。この中に、大阪会場のみなさんが抱えるコミュニティについて共通の課題がありそうです。
そのキーワードとは……
【農業女子】
「身近な集落の中で動きづらい女性農業者が入りがちなのが、県や全国などの“農業女子ネットワーク”。同じ志を持った人が広域ネットで交流して高め合うのはよいですが、それだけでは身近な地域の問題は解決しません」
【高齢者が多い(自治会・生産者グループ)】
「伝統的で固定化されたコミュニティで、動くのは大変です。でも、そこに何も知らない外国人や大学生などをあえて入れてみたり、外の組織と繋がってみたりすることで、年功序列の壁を越えたオープンな議論ができるようになります。公営化やマルシェなど、場を開いてみることも有効です」
【起業家の集まり】
「意見交換だけで終わらず、その先どうしたいか考えることも重要。スキルを持った人同士が広域でつながって事業を起こしたり、事業の支援をしてくれるコミュニティもあります」
【情報発信】
「SNSなどで、地域の魅力を発信。消費者に関心を持ってもらい、地域に来てもらって交流を促進するというやり方も。情報発信のプラットフォームを作ることも大事です」
コミュニティにも、いろいろな形があって迷いますよね。自分の目指す方向を考えるときに、次の「3つの視点」を頭に入れておくことを併せて教わりました。
1 エリア (繋がりたいのは、広域? それとも身近な範囲?)
2 テーマ (耕作放棄地の活用、マルシェ、農福連携などさまざま)
3 活動形態 (交流、情報発信、実事業または中間支援など)
金子先生からは、1、2、3の組み合わせで成功した実例が、千本ノックのように飛び出します!
だんだんみなさんの目が真剣になっていきます。メモを取る人も多く、漠然としたコミュニティのイメージが具体的になってきたようです。
■数字やデータは必要です!
たくさんのコミュニティの成功事例も紹介されて、夢もふくらみますが、ちょっと待って! 「まずは自分のコミュニティの今の課題を『具体的に』『客観的に』把握することから始めましょう」と金子先生。
「それも、ただ感情的に危機感をあおるだけでは、人はついてきません。みなさんが避けて通れない『男性社会』はデータがなんぼ、『お役所』も数字がなんぼの世界です」
農業就業人口、加工品の販売額、コミュニティの平均年齢などを調べ、研修ノートにデータを書き込んでいくことで、現状が可視化できるようになっています。
その上で、望ましい将来の姿(ビジョン)を描くのがよいそう。そのビジョンと現状のギャップが「課題」となるわけですね。
■地域資源という「宝」のリストから、発見できること
そして、課題を解決していくために力となってくれるのが、自分のまわりにある資源や人=「宝」です。思いつく限り書き出してみましょう。
自己紹介では「ウチの町には何もない」と笑っていた塾生も、ひとつひとつペンを走らせていきます。金子先生やみなさんの話を聞いてみて、改めて思い出すと意外と「宝」はあったのかもしれません。
書き出した地域資源を各グループで発表して、板書していきます。栄養士さんや移住者などの人材、大学などの教育機関、観光施設など、仲間に巻き込めそうな相手がたくさんあがりました。
中には、「農業ではなく工業関係の大学から、ITやドローンについて協力してもらう」「ママ友ネットワークの活用」「地域商社や老人ホームの活用」など、農業分野以外の連携先も登場。これらに塾生の誰かがコラボレーションして、革新的なコミュニティがうまれるかもしれませんね。
■コミュニティのビジョンをつくる
1日目の最後は、今日のワークをもとに「自分のコミュニティのビジョン」を書きだします。
ビジョンとは、こうなりたい将来の姿を示すもの。ビジョンがあることで、意思決定がスムーズになったり、チームで行動する際にまとまりやすくなります。そのためには「5年後に、〇〇〇〇が△%に□□□していること」など具体的な目標が必要になるそうです。
具体的に……って結構難しいですよね。
塾生「みんなが誇りを持てるようになるのが理想です」
金子先生「みんなって、具体的に誰のこと?」
塾生「みんなが楽しいと感じるコミュニティにしたいです」
金子先生「楽しいとは、何をすることでそうなるの? コミュニティに関わることで?」
など、ぐいぐい問いかけながら、漠然とした想いにカタチを持たせていきます。
さて、みなさんの地域への想いは、どんなビジョンとなって立ち上がったのでしょうか?
2日目は、みなさんのビジョンについて金子先生からのアドバイスをもらったり、身近な仲間を巻き込むための企画書づくり、自分の強みや弱みを分析するSWOT分析にチャレンジします。
次回の講義では、みなさんがどう動きだしたか、しっかりレポートいたします!