農女マップ

輝く農女新聞内で特集された情報を紹介しています。

女性農業コミュニティーリーダー塾 実践編
東京会場 最終講義レポート

男女のギャップが無くなるのは171年後!?

 


2019.3.13

3月13日、東京・大手町にあるビジネス拠点施設「3×3Lab Future(さんさんらぼ フューチャー)」にて「女性農業コミュニティリーダーフォーラム」が開催されました。農業に携わる女性がリーダーとして活躍するために何が必要か?をテーマに2つの講演が行われ、女性農業コミュニティーリーダー塾から3人の塾生がアクションプランを発表しました。


■男女のギャップが無くなるのは171年後!?

1つ目の講演は、株式会社Woomaxから青栁未央(あおやぎ・みお)さんが登壇。テーマは「女性のリーダーシップ」。

青栁さんの普段のお仕事は、企業や官公庁でのコンサルと研修講師。今回は「女性のリーダーシップ」に特化したお話ですが、普段は男性と女性のギャップをなくすために、男性と女性の特性の違いなどを紹介しています。

世界中でダイバーシティという言葉が使われ、男性と女性のギャップをなくそうという動きも盛んな中、アジア地域で男女のギャップがなくなるのは171年という計算もあるそう。ヨーロッパには400年という絶望的な数字を挙げる研究者も…。それを聞いて、当然ながら「えーっ」と驚きの声を上げる塾生の皆さん。青柳さんは、その171年をせめて10倍速にして、17年後には達成したいという思いでお仕事に臨んでおられます。


■いまの時代、無くてはならない!女性目線の商品開発

そうしたなか、まず語られたのは「リーダーシップの昔と今」に関するお話。

高度経済成長期のリーダーは、ほとんどが男性で、同じ属性の均質な組織でした。人口が増え続け、物を作れば売れる時代では、組織としては同じ属性の人を集めて、トップからの命令が「YES」で通る組織のほうがやりやすかったという背景があります。バブル崩壊までは、こういった組織でもうまくいっていました。

ところが今は、多様なリーダーシップが求められています。

人口減少の影響で「作れば売れる時代」は終焉を迎え、細かなニーズに対応した商品・サービスの開発が求められています。そうした変化を捉えて、組織の構成者の属性も男女問わず多様になってきています。ひとつの価値観だけでは組織力も商品力も弱いからです。

そういった組織ができる過程では、まず衝突が起こります。今まで「YES」で済んでいたことが「それは無駄ではないか」という議論が生まれるようになるからです。それでも「そういう考え方もあるよね」と違う意見を受け入れた組織は、次のステップに進むことができます。さまざまな意見が自由に言い合える土壌ができれば、活躍できる人材の幅も広がり、ひいては、組織に新しい価値が出てきて、利益に繋がっていきます。

実際、女性の発案によるヒット商品も生まれています。たとえば「冷凍した食材なのにサクッと切れちゃう!」というセールスポイントを掲げる三菱の新型冷蔵庫は、これまで男性目線では着目されなかった「冷凍庫から出してすぐに調理したい」というニーズにフォーカスして商品化!ヒットに繋がりました。また、キリンの「オールフリー」も、じつは女性の発案によるヒット商品です。


■目的に沿ったやり方を決断するのがリーダーの役割

次なるテーマは「リーダーシップとは何か」。

リーダーシップを発揮する場において大事なのは「目的は何か」ということ。

そこで青栁さんが紹介したのは「イソップ童話」のロバを売りに行く逸話です。4つのすべてのケースで、「2人も乗るとかわいそう」「女性だけ乗るのはけしからん」「女性だけ歩かせるのはけしからん」など、必ず批判される要素はあります。目的に沿ったやりかたを決めて決断することがリーダーの大事な役割だと説きます。


■巻き込まれたかどうか分からないぐらいがちょうどいい

2つ目の講演は、studio-L東京から、西上ありささんが登壇。テーマは「多様な参加者が募るコミュニティーの力」。


西上さんはデザイナーとして、グラフィックデザインだけでなく、自治体の制度設計にも携わり、多岐にわたって活躍されています。今回はその経験から、さまざまな「巻き込み方」の具体例を紹介してくれました。

「あまり『巻き込もう』とする人からは、距離を取りますよね」というお話に、大きくうなずく塾生の皆さん。「巻き込まれたかどうか分からないぐらいがちょうどいい」という好事例は、後ほどご紹介!

西上さんは自治体の制度設計に関わる際、まずはその町のパン屋と本屋には必ず足を運ぶそうです。パン屋には、その土地の特産品などの資源が必ず置いてあるから。また本屋にアート系の本があれば若者が活躍していることが分かるそう。そうやって町の実情を探り課題を明らかにし、計画書を作っていくそうです。
その上で、行政の予算が減少傾向にある今は、「みんなでやる」という時代。だからこそ巻き込むことが大事なのですね。

さてここで西上さんは、面白いデータを紹介してくれました。全国1万5千人分の「幸福度アンケート」の結果です。 「幸福度を感じているのは沖縄県が1位」「女性と男性では、女性の方が幸福度を感じる傾向が高い」「女性では自営業がいちばん幸福度が高く、東京の独身の会社員がもっとも低い」。さらに…住民の幸福度が高い地域では「地域活動の機会・支援制度」が充実しているほど住民の幸福度が高いというデータも!

さて、ここで「巻き込んだ」具体例の紹介です。

ある町でおこなわれたアートイベントは、主婦(おかん)が主役ということもあり、一般の民家で開催されました。最初は「お客さんが10人来てくれたらいいな」程度の数値目標だったにも関わらず、結果的に1週間に800人の来場者を集めました。楽しそうな”おかん”にいつのまにか”おとん”も巻き込まれていった好事例です。



また、煙(けむり)で情報を伝える「のろし(狼煙)」を現代に蘇らそうと企画された「のろしリレー」のお話も興味深いものでした。ひとりのおじさんが勝手にはじめたイベントでしたが、いつのまにか「のろし」の輪が広がり…57か所からのろしが上がるほど仲間が集まったとのこと。そこへ見物人が集まり、消防団も訓練を行う場として参加し、保健師が健康診断を行い、地域の小学校がのろし音頭まで作る「お祭り」になったという…「巻き込み」の好例です。もともと、自治体の町おこし企画のひとつとして始まったものですが…「ふたりひと組」という応募条件があったところを「ひとりの応募でも可」と変更した行政の姿勢も成功を後押ししたといえるでしょう。

ほかにも、生涯現役時代の介護や福祉を考えるという企画では、スターバックスが”巻き込まれ”て協力。「骨壷マグ」と「卒塔婆マドラー」で出された飲み物をいただきながら『人生を考える』というイベントが実現したそうです。


■完璧な案を出すより、まずはボロボロの大風呂敷を

「完璧な案を出すより、まずはボロボロの大風呂敷を広げた方がいい」と西上さんの言う通り、いずれもやり始めた人が面白がったり熱狂しているうちに、周囲がいつの間にか巻き込まれています。



西上さんは最後に「楽しいか、意義があるのか」のグラフを紹介。「意義があって楽しくて儲かる」、「意義はあるが楽しくはなく儲からない」など、プロジェクトを客観的に判断し、「自分がどのバランスでやりたいか考えて、進めていきたいですね」と講演をしめました。軽妙な西上さんの語り口に加え、情報盛りだくさんで、心の熱くなる講演でした!


■三者三様のアクションプラン

最後は、3人の塾生によるアクションプランの発表が行われました。


三森かおりさんは、勝沼のぶどう、ぶどう酒についてプレゼン。詳細な計画が記入されたシートにもとづき、戦略や構成員などのアクションプランも具体的に発表されました。



中村美恵さんは、豊橋の農業について。第三者のアドバイスによって生まれた気付きを活かした事例は、ほかの塾生の励みになったようです。



中垣野歩さんは、地元「くしはら」で、女性の個性を活かして地域のエネルギーにするという計画を、イラストも交えて発表。

3人の発表後には、聴講していた塾生から質問や励ましの言葉も! さらに、フォーラム終了後におこなわれた懇親会でも話は尽きず、熱気あふれる時間となりました。