- テーマ:「AI(人工知能)が支える10年後のビジネス
~産業実用化にむけて、現在のAIをうまく活用するコツなど~」 - 講 師:野村 直之(のむら なおゆき)氏
メタデータ株式会社 代表取締役社長 理学博士
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼担教員 - 日 時:2017年11月27日(月)14:00~16:30
- 『人工知能が変える仕事の未来』(日本経済新聞出版社)の著者で、メタデータ株式会社 代表取締役として、AI開発・運用支援、講演などで精力的に活動されている、野村直之氏をお招きし、「 AI(人工知能)が支える10年後のビジネス~産業実用化にむけて、現在のAIをうまく活用するコツなど~ 」をテーマに、講演会を開催いたしました。
会員企業の皆さまはじめ、60名以上の方にご参加いただきました。
【野村講師】
野村講師は、現在AIに関しての情報が氾濫しているが、人工知能という言葉の響きもあり後述のような誤解があると警鐘を鳴らした。
・AIは人間の能力をはるかに越えた計算能力とデータ分析ができる。しかし現状では、人間のように自発的に、柔軟に、色々なことができる訳ではない。
・AIは雇用を奪うといわれているが、AI導入により生産性が向上して経済成長率が伸びると考えられる。グローバル競争によりアウトプットの質と量を飛躍的に増大させねばならないのに対し、AIによる生産性向上効果以上に生産労働人口が大きく減少するため、2030年は、むしろ人手不足が予想される。
現時点でのAIの進歩の状況と、AIが今できること・できないこと、今後AIの発展で産業社会はどうなるかについて、様々な研究・調査事例も交えご講演いただきました。
- 講演の主な内容は以下のとおりです
- ・ディープラーニング(深層学習)は、人工知能の中に機械学習というジャンルがあってその中の一つで、そのディープラーニングにも学びの方法が幾通りもある。CNN(Convolutional Neural Network)というタイプのディープラーニングは幅広く応用できる、確率した技術である。囲碁の世界チャンピオンと対戦した「AlphaGO」は、自己対戦で天文学的な量の正解データを生成し、膨大な計算パワーに依拠し、ルールが極めて単純で勝敗が明確な囲碁特有の条件を活用した深層強化学習で作られている。
- ・機械学習に共通する特徴として、長所・短所でもあるが覚えさせる正解データが全てである。これが「正しいもの」であると人間が入力してあげないと期待した判定が出て来ない。今のAIは正解データでトレーニングされたことしかできない。それが、現在のAIのレベルである。自分の意思を持つのは少なくとも来世紀まで待たないとできないと思われる。
- ・AI導入において重要なことは、精度である。正解を出すために、どれくらいのデータを用意してトレーニングするかで、コストが十倍、百倍...と変わってくる。したがって、どれくらいの精度を必要とするかが事業化の際にROI(リターンオブインベストメント)を左右する鍵となる。つまり、必要のない100%の精度を求めてもコストがかかるだけであり、内容によって自社で精度と量を見極めることが重要になってくる。
- ・「AlphaGO」は、インターネット上に公開された3000万局のデータでディープラーニングをおこない、そのうえで、「AlphaGo A」「AlphaGo B」を製作して自己対戦による強化、さらには対局の勝率を計算して差し手を決定することで世界チャンピオンに勝利した。人間と同じような感覚をもった指し方をしているものではない。
- ・メタデータ社も東大病院と共同研究している医療分野では、AIを用いて、がん細胞の画像データを解析し、がん腫瘍の確率を高い精度で判定できるようになってきている。
- ・農業分野では、農地の稲をドローンで画像データを取得し、稲の病気の有無をその大量データをAIで分析することで迅速な対応が可能になる。
- ・企業のAI導入は、目的と目標が大事。目標は数値化する必要がある。ROIを求めるのか、生産性を向上させるのか、人間がやらなくて済むような仕事を置き換えるのかを決めることが重要である。他社がAIを始めたから我が社も導入するでは成功しない。
【講演会風景】
質疑応答の後に、野村講師と参加者の皆さまで名刺交換をしていただきました。全体として和やかな雰囲気で講演会を終了いたしました。
参加者の感想(一部抜粋)
- ・AIの可能性と限界をわかり易く説明していただき、よく理解できた気がします。適合率をベースに事業の仕方を考えるという考え方は目からうろこでした。自社事業でどういう使い方があり得るのかを今後考えたいと思います。
- ・漠然ととらえていたAIについて明快にご説明をいただき、腹落ちする点が多々ありました。
- ・新規事業に向け、AIを取組み始めています。AIを研究者の観点で説明され、おもしろいご講演でした。
- ・間接業務の効率化の為のAI活用について検討しています。具体的にどういう視点で検討するべきなのか着目の仕方など理解できました。
以上