出展者インタビュー アイディールブレーン株式会社

アイディールブレーン株式会社
執行役員 技術営業部長
南里 晃一郎 様
展示会はお祭りのような雰囲気
非日常のやりとりで商談が進む
目の前で制震装置の実験を見てその効果を実感していただく
JHBS2023には、地震対策の製品である「制震テープ」と「ミューダム」「ディーエスダンパー」の3点を出展しました。これまでは製品だけを配置してご紹介させていただくことが多かったのですが、今回は少し趣向を変えまして、制震性能の実演を行いました。
ブースのコーナーに木造の構造体を設置。これに自社で設計・製造した微振動を与える装置を取り付け、地震のような揺れを起こします。最初は制震ダンパーを機能させずに揺れの具合を見ていただき、その後制震ダンパー「ミューダム」を装着し、どれくらい揺れが低減されるかを確認していただきました。
制震ダンパーがいかに揺れを抑えられるかという効果を理解していただくには、やはり目の前で実演を見ていただくのが一番なんです。
以前から工務店さん主催の展示会などで、実演の評判が良いことは分かっていました。しかし、擬似的な揺れを発生させる装置は購入するとそれなりに金額がかかります。工務店さんや問屋さんからも、「ああいう実演会をやって施主さんに見せたいんだけど、あの装置、高いんだよね」というお声をたくさんいただいていました。
「だったらいっそのこと、うちで作っちゃおう」ということで、当社で装置の設計・製造をしました。この装置は、当社の製品をご採用いただいている工務店さんには無償で貸し出しを行なっており、そのサービスのご紹介も兼ねて、ブースで実演を行うことにしました。
来場されたお客様からは、「これ、いいですね」「うちにも何台か置きたい」といった好反応を多くいただき、いくつもの具体的な商談につながりました。

展示会では新規顧客を開拓しつつ既存顧客との関係も深められる
JHBSには毎年出展しているのですが、目的は大きく3つあります。「新規顧客の開拓」「既存顧客への深耕営業」「他出展者との交流・関係構築」です。
まず1つめは、そのままずばり「新規顧客の開拓」。これまで会えなかったお客様に、当社の製品を知っていただく機会として活用しています。
かつて、別の展示会に出展し始めた頃、目に見えて大きな成果が得られないという時期がありました。ある担当者が「制震テープ」を出展した時など、ロール型のテープという形状からか、養生テープなどの副資材コーナーに置かれてしまったそうです。結果はもちろん散々。
そんな中、2014年に大きな転換を迎えました。ちょうど新製品の「ミューダム」を開発したタイミングでJHBSさんに初出展したところ、東日本大震災のあとで地震対策への注目度が高まっていたというタイミングの良さもあって、出展したその日から新規のお客様がバンバン取れたんです。展示会の効果を改めて感じました。これはものすごい成功体験で、以来、すっかり依存しています(笑)。

2つめの目的は「既存顧客への深耕営業」です。展示会場は、地方のお客様など、普段なかなかお会いできない方に直接お目に掛かる貴重な機会です。
今回の展示会では、どちらかといえば深耕を重視しました。コロナ禍が開けて最初の開催ということで、当社の営業担当者が地方のお客様に会うためアポイントを取ろうとしたところ、「展示会に行くんで、そこで話しましょう」と言っていただきました。
やはりじかにお会いするのは効果的で、会場で2時間もいろいろなお話ができました。普段、リモートで話しているお客様とも、じかに出会えば「もう、ウチと御社で、これやっちゃいましょう!」と、アイデアベースだった話がどんどん進んだりします。
また、意外に見逃せないのが「リマインド効果」。かつてお付き合いがあったお客様の中には「今は、省エネにお金を使わなければいけないから制震はちょっと休止中なんだよね」とか、「よそのメーカーに変えちゃった」という方もいらっしゃいます。普段だと、そういう方へのアプローチはなかなか難しいのが実状です。新製品や新しい提案でもない限り、アポイントは取りづらい。
ところが展示会というシチュエーションなら「お久しぶりです」と声を掛けて現在の状況を聞くことができる。そこからお取引が復活することもありますし、これは大きなメリットと考えています。
他出展者と交流・協力し合い顧客を紹介しあうことも
3つめが「他出展者との交流・関係構築」。展示会は、今後も連携していけそうな他メーカーさんと仲良くなる貴重な機会でもあります。
何回も出展していると、ひょんな出会いが生まれるものです。ブース内でお話しながら「失礼ですけど、今まで私達3回ぐらい会話していますよね」「ですよね、一昨年も話していると思うし、その前も一回聞いていますよね」みたいな(笑)。よくすれ違いざまにお互い顔を覚えていて「ああ、どうも」という出会いもあります。
こういう出会いを、ノイズや時間のムダと捉えることもできます。しかしこうした横のつながりがお互いのビジネスに発展することもあるのです。
例えば「お客様の紹介し合い」。商談の中で、「そういうお困りごとだと、あっちの〇〇さんのところも面白いかもしれませんよ」とご紹介したり、逆に向こうから当社のブースに連れてきてくれることもあります。今回も、ある会社さんがお笑いコンビ・フォーリンラブのハジメさんを紹介してくれて、YouTubeで取り上げていただくなど貴重な機会を得ることができました。
展示会はお祭りのような雰囲気になりますから、会場ならではの会話やつながりが生まれるものです。普段お会いする時はお互いにすまし顔なのに、非日常の場での再会で盛り上がったりすることはよくあります。

技術研究所を顧客に広く開放 自社の技術力や魅力を知ってもらう
展示会などで、お客様に自社製品をじかに見てもらう。それは会社として大事にしている方針の一つです。当社は技術開発から始まった会社です。実演を通して実物の効果を体感していただければ、必ず納得して購入していただける。製品に対して、そういう自信を持っています。
ただし、お客様に納得していただくためには、営業担当者が技術をきちんと理解していなければなりません。創業者で現会長の佐藤孝典がずっと言っているのは、「営業担当者はカタログだけで売りに行くな。自社製品の本質をきちんと理解した上で、お客様のところに行きなさい」ということ。
ですから、営業担当者も製品開発に携わるし、試作段階の性能実験にも必ず立ち会うようにしています。
当社は免震・制震メーカーとしては珍しく、埼玉県川口市に技術研究所を持っています。本格的な振動装置を置いて、品質管理の試験はもちろん、素材研究などの試験を行なっています。営業担当者は毎月のように、工務店や問屋、建築家などのお客様を研究所に招いて実験の様子を見せたりしています。今や、開発スタッフよりも試験装置の操作が上手い営業担当もいるくらいです。
先日も、ある建築家さんがいらっしゃいました。現場で使っている建材の性能確認の実験をしたところ「ああ、やっぱりこうなったか」という結果になったので、当社の制震テープをお見せしました。すると「これ、いいね!」と気に入っていただき、ご自宅を新築するときに使っていただきました。ブログなどでもご紹介いただいて、そこからワーッと売れました。
とある工務店の会長さんに別の実験をお見せしたときは、その場で自社に電話されて「とにかく、これからうちはこれを使うことにする。今すぐ注文入れろ。どこどこの物件からすぐやるぞ」とおっしゃっていただきました。その後の懇親会の最中に注文書が入ってくる、ということもありました。
たしかに通常、こうした研究所の実験装置は気軽に使えるものではありません。技術開発部門に連絡して許諾を取って予算の処理をして……手間も時間もかかります。しかし当社では、営業の予算と決裁で使えるようにしています。これは大きな強みですので、今後も大事にしていきたいですね。
展示会で思わぬ顧客に出会い新用途を見出してもらうことも
展示会の中でも特にJHBSを重視しているのは、多くの商材を取り扱っているうえ、様々な来場者がいらっしゃる点。あと、時期がすごく良いんですよ。
他の展示会ですと、開催時期によっては工務店さんなどの意思決定権を持つ方が決算などで追われているタイミング。そのため、キーマンが来ないことがあるのです。JHBSは11月なので、ちょうどいい時期だと思っています。
他に、地方の工務店さんや販売店さん、問屋さんが主催する展示会に参加することもあります。こちらならではのメリットもあり、出展する意義は当然ありますが、主宰する方の売り方や見せ方に組み込まれて出展するかたちです。自分たちが見せたい製品をやりたいように、いろいろなお客様に広く周知していただくなら、JHBSが一番いいですね。
もし今、出展を迷われている方がいらっしゃったら、一度、小さめのコマでもいいから出してみるのをおすすめします。当社もそうでしたが、展示会に出すことによって、思わぬお客様に思わぬ使い方を見出していただけることもあります。
当社は免震・制震装置メーカーですが、仏像などの文化財保護や、自衛隊での危険物の運搬、医療系で薬品の保管など様々な用途でも注目されるようになりました。展示会に出すことで、顧客だけでなく、新規の「分野」も開拓できるかもしれない。そういう点でも、大きなメリットがあると思っています。
