出展者インタビュー 株式会社otonoha

株式会社otonohasound veil事業部
事業部長 サウンドコンサルタント
竹本 悠平 様
認知を高める目的を果たしつつ、
想定外のお客様にも出会えた
今回の目的は認知を取りに行くこと
自社を知ってもらう工夫をした
今回、JHBS2023 イノベーションオフィス総合展に出展した目的は、ずばり「認知」を取りにいくこと。当社のサービスを体験していただき、知っていただく。それを最重要ポイントに据えました。
そのため、ブースはポップでキャッチーなものにしました。主力商品の1つである「植栽型スピーカー」を置き、大きなパネルには、2つのキーワード「森かと思った。オフィスだった」「えっ!? 植栽から音が鳴るの?」を印刷。サウンドを流しながら、来場者の方に「何か面白いことをやっているな」と思っていただき、少しでも足を止めていただければ成功だと思っていました。
当日はシフトを組んで、ブースに常時社員が3人はいるようにしました。ブース内の2人で商品やサービスの説明を行い、外に1人を配置してチラシやノベルティを配ったり、お声掛けをしました。
ノベルティは、ロゴとQRコードの入った小さなチョコレートです。「甘いものでもいかがですか」と声掛けしながら自社ブースを見ていただく作戦は比較的うまくいったように思います。
今回、参加したことで、潜在的な需要の多さを再確認できました。「お、なんだこれ?」と足を止めていただいた方にお話しさせていただくと、まず「最初プロダクトの話だと思ったけど、違うんですね」という反応が返ってきました。少し説明を進めると、「ああ、そういう問題うちにもあります」と、気付いていただける。
これはまさに、展示会に期待していたことでした。

体験さえしていただければ良さが分かってもらえる
当社は顧客にサウンドソリューションを提供する、音環境コンサルティングの会社です。
音環境コンサルティングと言っても、多くの方にとって耳に馴染みのない言葉だと思います。簡単に言うと、「IoTやクラウド、デジタル技術を活かし、データや科学的知見に基づいてオフィスのサウンド環境を整備することで、顧客の目的達成を支援」すること。
生産性や従業員のウェルネスの向上、あるいはWeb会議の音漏れ防止など、オフィスのサウンド環境を改善することで、様々な経営課題を解決できます。
ですが、サウンドソリューションはまだ認知度の低い市場です。しかも当社は、音響機器メーカーのTOA株式会社の社内ベンチャーとして2023年4月にスピンアウトしたばかり。オフィス内に「植栽型スピーカー」を設置いただき、環境や雰囲気に合った自然音などのサウンドを流すという「sound veil」というサービスを展開していますが、認知度はほぼゼロです。
ウェビナー(Webを使ったセミナー)などオンラインを使った施策もとっていますが、サウンドソリューションという概念は説明できても、実際の効果をお伝えするのは言葉や文字では難しいのが実情です。
一方で、体験さえしていただければ、すぐに「ああ、そういうことね」と理解していただける自負もありました。ですから、「まずはお客様に自社サービスを体感していただくことが大事だ。そのために展示会を活用しよう」というアイデアは、創業当初から念頭にあったのです。
働き方改革やコロナ禍で注目されるオフィスのサウンド環境とは
現在、オフィス内における五感の快適さに注目が集まっています。Delos社「WELL認証」の取得を目指す企業が増えていることが象徴するように、オフィス内に居る顧客や従業真のウェルネス(健全性・爽快さ)を追求するうえで、光や音、香りなどの五感といったソフト面からアプローチすることは非常に大切です。
働き方改革やコロナ禍をきっかけに、多くの企業でワークプレイスのあり方が問われる時代となり、その動きは加速しています。
オフィスとは投資すべきものかコストとなるものか。この問いに対する答えは、企業によって異なると思いますが、投資すべきものとして捉えた場合、オフィス内のサウンド環境を改善させることは、今や欠かせない要素の一つと言えるでしょう。
当社では、オフィス環境のサウンドを改善することで大きく3つの効果があると考えています。1つは、純粋な環境の改善。「Web会議などの音漏れ対策」などがこれに当たります。2つめは、従業員の生産性やウェルビーイング向上のため。ここは人材採用・定着などにも関わってくる部分です。3つめはクライアントへの効果。自社のイメージアップや訪問顧客の満足度を上げることができます。
ただし、どこに軸を置くかといった比重や、誰に訴求するかといった細部は企業やオフィス環境によって大きく異なります。そのため当社では、導入にあたって、顧客が何を実現したいのか、ミッション/ビジョンといったところのヒアリングをかなり重要視しています。

サウンドソリューションはクロスモーダルで効いてくる
サウンドソリューションは「掛け算」です。人間は、目や耳、鼻から入ってくる情報に対して、脳内で総合的に処理したうえで反応しています。聴覚や視覚といった感覚単体では、それほど感情に働きかけないことがあります。逆に言うと、視覚×聴覚、聴覚×嗅覚など五感が相互に作用し合う状況など、いわゆるクロスモーダルになりやすい環境を作れば大きな効果が望めます。
これはホラー映画を例にとると分かりやすい。画面に恐ろしい映像が流れても、BGMや効果音がないと、意外に怖くないものです。ところが音と一緒に体験すると、ものすごい恐怖体験に変わります。
オフィスのサウンド体験も同じで、オフィスの視覚情報などとサウンドがマッチしていないと、所定の効果は望めません。例えば自然音は緑の多いオフィスならフィットしやすいですが、黒基調のシャープなオフィスでは違和感しかない。逆に、ジャズなどのおしゃれな音楽は黒基調のオフィスには合いますが、公園のようなのどかな雰囲気にはマッチしません。

サウンドは極めて感覚的な領域でもあります。人によって好悪が違うし、同じ人でも天気や気分、状況によって快不快が変わってきます。企画された方が「うちの会社にはこういうBGMが良いだろう」と流しても、実際に働く方に気に入ってもらえないこともざらです。そのため、導入して終わりではなく、その後の運用こそ大事だと考えています。
どこでどんな音源が流されたか、いつ止められたかといったデータはすべてクラウドに集めて解析。当社でも日々トライアルを行い、どんなサウンドだと会話が活性化するか、人が集まりやすいかといったデータを集めています。それらを組み合わせ、現地の様子をみながら、定量と定性のバランスをとりつつ、総合的な運用方法を考えることが大切なのです。
そのため当社では、親会社のTOAや関連子会社と連携しながら、スピーカーなどの「ハード面」、スマホアプリを使ったコントロールシステムやコンテンツなどの「ソフト面」、導入後の運用サポートという「サービス面」の3つの側面から、最適なソリューションをご提案。カスタマーサクセスのために、企画から設計、納入、運用、定着まで一貫したサービスで、目標達成のお手伝いをしています。
まずは自社の製品を認知し体験してもらうことが重要
JHBS2023では、社内の音環境に課題意識を抱えている方々に多く出会うことができました。オフィス改修プロジェクトに向けた情報収集されている方や「五感のソリューション、やってみたかったんだよね」という方々。あるいは、オフィスのソリューション全般を展開されている企業さんから「何か一緒にやれませんかね」といったお声掛けをいただくなど、まさに我々のターゲットとしている層にタッチできたのは大きいですね。
当初は想定していなかった分野への広がりも得ることもできました。工務店さんから個人向けユースのアイデアをいただき、病院向けの内装業者さんから待合室などでの需要のお話をいただき、大きな気付きを得られたのも収穫です。
当社は、IoT×音のビジネスです。「サウンドを軸に様々なデータをクラウドでつなぎ、会議室の予約システムなど他サービスとの連携をしたい」。それは創業当初から考えていたことでもあります。そうした企業さんとのつながりを得られたことは、本当に嬉しく思っています。
改善点としては、ブースの前に来る前から気付いてもらえる仕掛けを施すこと。3mというサイズは思ったより小さいんです。3mっていう距離は、普通に歩くとおそらく1秒もかからない。ブースに近づく前から何か印象を与えておかないと、すーっと通り過ぎてしまいます。そこのところは、もう少し工夫が必要だったかもしれません。
あと、他社さんのブースで上手にやられているなと思ったのは、強いスポットライトをうまく活用されている点。強い光があると、それだけで目立ちやすいと感じました。
今回、初めての出展でしたが、ブースの設置や衣装・装飾、搬入や申請などは施工会社さんに丸ごとお願いできたので楽でしたし、もともとJHBSさんから丁寧なガイドラインをいただいていたので出展に際して困ったことはありませんでした。運用面ではうまくいったところと、そうでないところがあるので、次回以降に活かしていきたいですね。
